SS徒然未分類リネ日記
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2007.04.09 Mon
無限に広がる大宇宙……

夜空に広がる、星々を従えた漆黒の大空間は、その広大さ、神秘さ、美しさをもって、古来より人々を魅了して止むことがない。
誰しもが一度は夜空を見上げ、星を見つめ、空想の世界で宇宙の海を泳いだことがあるだろう。
そうして有史以来、人と宇宙とは長い時を共に歩んできた。


そして時代は21世紀。

18世紀にはじまった産業革命による、人類の科学分野の目覚しい進歩は、20世紀に入ると更に加速し、陸に、海に、空にと、その生活圏を貪欲に広げていった。
そして人類は、最後のフロンティアである宇宙へまでも進出しはじめ、衛星軌道上はすでに数多の人工衛星で覆われ、月面着陸までも成し遂げた。

だが、未だに人類の足跡は地球圏の一部である月まで。
その先の領域となると、数多くの無人探査船は送り込んではいるが、未踏のままである。
人は未だに地球の揺り籠からは抜け出てはいなかった。

しかし、遂に人類は一人の若者を地球圏外に送り出す。


ご想像の通りだとは思うが…………名を横島忠夫といった。








事の発端は一月ほど前。
その日、いつものように美神除霊事務所は営業していたが、常とは少し異なる客を迎えていた。

「N○SA?そんな所の人が何の用?」

受け取った名刺を見ながら、言葉を発したのは、事務所の所長、美神令子その人である。
美神は名刺を指で摘みながら、目の前の客をもう一度観察してみた。
応接セットの対面に、その客である男が座っている。男の名はオルドリン、年は30代後半くらいで、中肉中背、本人曰く日系ハーフらしい。ごく普通のスーツに身を包み、外資系ビジネスマンという印象が一番しっくり来るかもしれない。

「はい、実は我々NA○Aは、現在新しいプロジェクトを推進しています」

男はおもむろに話し始めた。

「その新しいプロジェクトとは……『ゴッド・マーズ計画』!!」

そこから、男はなにやら専門的な話をはじめていったが、生憎と美神には興味がない。
要点をまとめると『火星に人を送り込む』ということらしかった。間違っても六神合体なんかはしない。
確かにそれは、宇宙開発において画期的なことなのだろう。そっち方面の関係者ならば、興奮するのもうなずける。
…しかし、それとウチのような一介の民間GSに、どんな関係があるというのか?

「え~と、オルドリンさん?大変素晴らしいことだと思いますが……ウチへはどのような御用件で?」

本音では『いいから要件をチャッチャと言え!このオタク!!』と美神は思っていたが、そこはプロ。相手が顧客(または顧客予備軍)ならば、このくらいの礼節は美神でも出来る……こともある。

「────おっと、そうでしたHAHAHA!!」

やっぱりそう笑うんだ。
丁度、お茶を取替えにきていたキヌは、偏った外人知識を得ているのか、妙なところで感心していた。
彼女は、二人の湯呑に程よく茶を足すと、そのまま部屋を後にする。

部屋のドアが閉まると、オルドリンは淹れられた茶をなんとも美味そうにすすりながら言った。

「…実はですね、お宅の従業員『横島忠夫』氏をスカウトに来ました」
「────は?」

美神は、なんとも情けない声をあげた。

「ですから横島氏を…」
「いえ…それは判りましたけど、何故うちの丁稚──いえ横島君を?」

確かにまったく繋がらない。人類の壮大な計画である『ゴッド・マーズ計画』。それとウチの丁稚。あまりに話が飛躍しすぎていて、美神としても素直に疑問を言うよりなかった。

「彼を火星行き有人宇宙船のパイロットにします」
「────はい?」

さらに話がすっ飛んだ。火星宇宙船のパイロット?あれが?
美神の知識では、既に慣例と化してしまったかのような宇宙飛行ならばともかく、国の威信を背負った重要な宇宙計画のパイロットと呼ばれる人種は、その時代のトップ、エリート中のエリートが選ばれるはずだった。
過酷な訓練をこなし、あらゆる知識を身につけ、且つある分野においては追随をゆるさないスペシャリスト……そんな『選ばれし者達』である。


それと────横島忠夫?


「え~と、人違いじゃありませんか?」
「いえ、確かに此方の横島忠夫氏です」

オルドリンはキッパリと言い切る。
この言い切りように、さすがに美神も人違いであるとは思わなくなった。
…思わなくなったが、余計わからなくなったりもした。

「…出来ればもう少し詳しく……その、何故うちの横島がパイロットに選ばれたのかなどを」
「おっと!これは失礼しました。HAHAHA!!」

いや、もうその笑いはいいから。

それからオルドリンは、横島が何故パイロットに選抜されたのかを説明しはじめた。
曰く
 幽体とはいえ衛星軌道で除霊をしている
 某国ロケットにて月面着陸までしちゃっている
 生身で大気圏突入までしちゃっている
 でも死んでいない

つまり

「彼ならば、どんなことがあっても生還しそうじゃないですか~HAHAHA!!」

これでいいのかNAS○。
しかし、おちゃらけた雰囲気もそこまで、一転してオルドリンは真面目な顔をする。

「──『文珠』です」

なるほど納得がいった。美神は疑問が解けたというように、眼を細めた。

オルドリンの説明は続く

N○SAは、既に何度も無人探査船などを火星に何度も送り込んだ実績がある。したがって火星往復や着陸といった部分は、失敗するなど考えてはいない。
だが、この度のプロジェクトは『有人』。
無人探査船の場合、あるトラブルが発生したとしても、最悪それを破棄してしまえばいい。だが、有人の場合はそうはいかない。有人飛行とは、乗り込んだ者が生還できてこそ成功なのだから。

ここで目をつけたのが『文珠』そして、それを生み出せる唯一の存在、横島忠夫である。

未だにその生成や仕組みなどは、全く解明できないが、あらゆる現象を起こせるそれは、いってみれば奇跡に等しい。その奇跡の力があれば、あらゆるトラブルを乗り越えて、このプロジェクトを成功させてくれるのではないかと。
例えば宇宙船の酸素供給システムが壊れたとしても、『文珠』で『酸・素』などとすれば、時間制限はあるが耐えれてしまうのだ。

「…高いわよ?」
「無論承知の上ですミス美神」








それでどうなったかというと。

「いっいやだぁぁぁぁーーーーっ!!もう宇宙には行きたくないーーーっ!!」

ここは某国航空宇宙局、通称N○SAと呼ばれる機関である。
あのあと、美神は事務所に顔を出した横島を、問答無用で捕縛すると、説明も無いまま飛行機に飛び乗り、数時間後にはこの施設に来ていた。
…なんというか昔のTV番組「電○少年」の若手芸人のような扱いである。

「いい加減にしなさい!もうギャラはもらったんだから」
「あんたは大金もろて、それでえーかもしれんけどっ!俺には命までかける理由はないぞ!しかも今度は行くの俺だけじゃねえかぁぁーーーーっ!!」

いつものように大金に眼がくらみまくっている美神、そして命の危険に喚く丁稚。
だが、この度はさすがに、横島だけを生贄にすることになるので、美神としても何時もどおりに折檻、というのは少し憚られた。
尚、折檻は躊躇したかもしれないが、何の説明もなくここまで連れてきたことはスルーである。

「ん~。どうしたものかしら」
「HAHAHA!!そんなことは問題ナッシングデース」

母国に帰った為か、ますます怪しげな日本語を操りながら、オルドリンが登場した。

「我が国の力を甘くみないで頂きたい」

そう言ってニヤリと笑うオルドリン。何処となく凄みがあった。
美神は…N○SA来たのは早まったか?…と僅かに思った。もし彼らが強引な手段に出た場合、ここではあまりに分が悪い。
そんな美神の思慮を他所に、オルドリン右手の指を鳴らした。

開かれるドア。そして、よく訓練された動作でドアから入ってくる多数の人々。
そして、美神と横島は完全に包囲されてしまった


────彼女達に


横島の周りに立つのは、妙齢の美女!美女!美少女!
既に彼女達の一部は、横島の顎のあたりをさすったり、耳に吐息を噴きかけながら囁いたり、腕を自らの見事なバストに埋もれさせたりと一時的接触を果たしている。

「フフフ。我が国の諜報力は完璧です」

おそるべしC○A。

「さて、横島君……」

オルドリンは、もはや昇天寸前の煩悩少年に対して、厳かに言った。

「彼女達は、君を手取り足取り訓練し、またサポートするため集められた者達なのだが…………彼女達と協力して、プロジェクトを成功さえてはもらえないだろうか?」

答えなど既に決まっていた。


その後、なぜか危機感を抱いた美神が、現地に事務所メンバーを召集したり、訓練中は無傷だった横島が、訓練後にボロ雑巾のようになるという怪事件が多発したり、実は使用される宇宙船がカオス謹製と知り、横島が喚いたりと、色々あったりしたが

────時は流れ、いよいよロケットの打ち上げ日となった。








既にロケットの操縦室に乗り込んでいる横島。

さすがにその表情は緊張している。
美女美少女のインストラクターという、彼にすれば天国のような訓練であったが、そんな中でもポロポロと、この計画の偉大さ、そして掛けられた期待の大きさというものが、横島にも伝わってきたのだ。


──人類の偉大な一歩の為に、絶対成功させる──


横島は珍しくシリアス顔をしていた。責任を果たそうとする男の顔に見えた。
もっとも、彼の力の源は煩悩であるため、宇宙船のペイロードの3分の1が彼の煩悩支援アイテムに費やされたことを知らなければであるが。

「いよいよですね……大丈夫でしょうか横島さん」
「…まあ、あいつは不死身だから、なんとかなるでしょ」
「あれに先生が乗っているのでござるか!拙者尊敬するでござるよ!」
「…デジャブーランドに似たようなのあったけど、あれとは違うの?」

美神除霊事務所の面々は、基地内の展望室から、彼方に見えるロケットを眺めていた。
いろいろあったが、さすがに人類の希望を背負ったプロジェクトを、彼らの良く知る人間が行なうのである。少しは特別な思いも湧こうというものだ。
一名よく分かってないのも居るようだが。

「さて、そろそろです」

彼女達の後ろから、オルドリンが声を掛けてきた。
いよいよ打ち上げである。
カオス謹製『スーパーワンダフリャー地獄極楽冥界爽快大霊界波動対消滅N2シズマ────ええいとにかく諸々のすごいエンジン』を使用した特注宇宙船は、通常年単位でかかる火星行きを往復3ヶ月程度でこなすことが出来る。
とはいえ、彼とのしばらくの別れだ。どことなく静かな空気が漂う。


室内にカウントダウンが流れる

────6・5・4・3・2・点火!!

グオーーーーン

そして、人類初の有人火星探査船は大宇宙に飛び立ったのであった。








「もう、地球がどこなのかよくわからんな」

宇宙船内でラーメンをすすりつつ、横島は呟いた。
既に打上から1週間、彼の乗った宇宙船は月機動を遥かに超え、人類未踏のエリアへと入っていた。

ちなみに、宇宙空間で何故ラーメンが普通に──どんぶりからすすって──食えるのかといえば、横島忠夫の反則技『文珠』のおかげである。信じられないかもしれないが、彼の『文珠』は重力を操れるのだ。
もし、この重力制御の仕組みだけでも解明できれば、人類は計り知れない恩恵を受けることが出来るのだが、今のところは宇宙空間でラーメンを食う為にしか使われていない。
バレたら世界中の物理学者に撲殺されそうな使用方法ではある。

「…しかし……暇だな」

最後の露を飲み干して、横島は空になったどんぶりを適当にその辺に置いた。
普通の宇宙飛行士ならば、それこそ分単位でスケジュールがビッシリ組まれるのであるが、生憎と乗組員は横島である。

N○SAも彼の生存能力、文珠の力には期待しているが、裏を返せばそれ以外は全く期待していない。したがって、彼には課された宇宙空間での実験などは何もないし、宇宙船の制御などは、すべて自動化、もしくは定期的に交信されるN○SAからの遠隔操作となっており、通常、横島は只座っていればよいだけなのだ。

しかたない、文珠の生成でもしておくか──と、彼が宇宙船に持ち込んだ煩悩支援アイテムを鑑賞しようかと思った時であった。


ベチン


……なんとも宇宙空間ではありえない音がし、宇宙船は急停止した。

「なんだあぁぁーーーっ!!」

もの凄い速度で飛んでいた宇宙船。それが一瞬にして停止したのである。普通は船体など持つはずもなく、すべてがバラバラになって宇宙の藻屑と消えるのがオチなのだが、なぜかそれはなかった。
もっとも内部は急制動のあおりをうけ、自動車の急ブレーキくらいの衝撃はあった。

船内でしこたま色々なものに衝突し、血を流す横島。無重力なので赤い玉が浮かんでいって綺麗である。

とりあえず、お約束的にあっさりと怪我から復帰すると──N○SAからスカウトが来るわけである──、彼は宇宙船になにが起きているのかを調べてみた。
とは言っても、対して機械類が詳しいわけでもない彼には古典的確認方法、つまり肉眼で窓の外を見ることくらいしか出来なかったのだが。

そして、窓の外を見ると








「あちゃ~~人間はもうこないなとこまで来るようになってしもうたんか」
「フム、予想よりも早いですね」

…………なんか12枚羽の悪魔と、おヒゲの聖人がいた。

「しっかし、困ったな~まだこっから先のエリアは出来てないで」
「そうですね……皆頑張ってくれてはいるのですが」

なぜだろう、ここは宇宙で声なんて聞こえるはずもないのだが、しっかり聞こえてくるのは……ああそうかこれは夢なんだ。

「…夢とちゃうで~」
「状況についてこれず、現実逃避をはじめたのですよ。判ってあげてもよいでしょう」

そんな声が先ほどより至近に聞こえたことで、横島は一気に覚醒した。
目の前には、先ほど宇宙船外に見えた二人が、横島の前にいる。

「あ…あの~?いったいどちら様でしょうか?」

めちゃめちゃビビリながら横島はたずねた。目の前の二人(?)、なんというか言動はアレだが、ものすごい力を感じる。

「あ~ワイは”サッちゃん”、んでこっちのヒゲが”キーやん”な」
「…ヒゲとは失礼ですね」
「…それで、その”サッちゃんキーやん”様が、いったいこのような所で何を?」
「ええな~それ、今度ワイらのコンビ名にしよか?」
「私はコンビを組んだ覚えはありませんが……と質問に答えましょう」

そう言って、”キーやん”は言葉を続けた。

「…簡単に言うと、この先は”まだ出来ていない”のです」
「────は?」

何を言っているんだこの人(?)は?

「だから、まだ出来てないねん。今鋭意製作中といったところな」

そう言って、二人(?)は横島を外に連れ出した。なぜか息も出来るし気圧も問題なかったが、既にそんなことはどうでもよくなってきている。

「ほれ、見てみい」

と言って”サッちゃん”が指差したのは、宇宙船が止まっている先端。
なんというか…………書き割り?

「そういうことや、地球から見えとった宇宙は、全部書き割りなんよ」
「ええ、実はそうなんです」

────衝撃の事実

ちなみに、果てしなくウソくさいが、この二人は神魔のトップらしい。
二人の言うところによると、地球と月以外は、すべて書き割りである。もちろん只の書き割りではなく、太陽はぐるぐる回るし、星々もキチンと運動し、それなりの光線も放出している。
でも書き割り。

「ですが、人類が宇宙に進出してきたので、とりあえず急遽太陽系だけでも用意することになったのですよ」

”キーやん”はお茶を飲みながら答えた。ちなみに三人(?)は宇宙船に戻ってきており、何処からとりだしたのかコタツを囲んで番茶をすすっている。

「けどな~、これが中々に大変やねん。物質密度やら多様性なんかは大したことないゆうてもな、空間ボリュームがボリュームやさかいな~」

だから、予定が遅れているらしかった。

「今までは無人探査機などでしたので、こちらで適当に捕獲して、あとはそれらしいデータを地球に送信してあげればよかったのですが」
「せやな~さすがに”人”をだますのはムズイわな~」

どうやら、現時点で人を乗せた宇宙船がここまでくるのは、彼らにとってかなりイレギュラーであったようだ。

「…そこで、横島君。あなたに協力していただきたいのですが」
「そやそや、あんじょうたのむで~」








そして、予定通り横島を乗せた宇宙船は、無事地球へ帰還した。

海上に落ちたポットから救出された横島は、ヘリに乗せられると、人類史上初となる快挙を成し遂げた英雄を、一目見ようと集まった群衆の前に連れて行かれる。

壇上に祭り上げられた横島に、各国メディアのマイクが一斉に向けられた。

「今の心境を一言」

彼は、何かを悟ってしまったかのように遠くを見つめる。そして、ぼそりと言った。






「人類は宇宙に出るにはまだ早すぎる────そう、少なくとも来春以降でなければならない」










無限に広がる大宇宙…………

「皆気張れや~、年末にはオーブンベータ開始するで~来春には正式公開目指すぞ~」
「やれやれ、今年のお正月は帰省できそうもないですね」

人類最後のフロンティアは、永遠に未開のままかもしれない。







おしまい
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