SS徒然未分類リネ日記
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2007.04.11 Wed
ガララ

小気味いい音がして、木製の淵にガラスがはめ込まれた引き戸が開かれた。
暖簾が揺れて、若い男と少女が入ってくる。

「らっしゃーい!」

うどん処「白亜庵」東京本店。
ここは色々な雑誌などでも取り上げられるうどんの老舗、とくに使用している『お揚げ』については国産丸大豆から自家製で作り上げた逸品と、評価も高い。
そして、間違っても主人はティラノサウルスではない。

「うふふ♪ようやく来れたわ~」

丁度二人掛けのテーブルが空いていたので、そこに腰をかけるタマモ。彼女の生き甲斐とでもいうべきお揚げ、その逸品が楽しめる名店に来たということで、かなり機嫌がいい。

「…お蔭で俺は、給料日までインスタントラーメン確定じゃ……」

そして、彼女の向かいに座る男。
予想どうりだと思われるが、当然ながら横島忠夫である。
白亜庵、選りすぐりの材料を使用している名店だけあって、値段もそれなりに張る。給料日前の彼には少し厳しい出費だった。

「男がいつまでもウジウジしない!大体、ず~~~~~~~っと前にした約束じゃない、これだけ待った私に感謝してほしいくらいだわ」

「…わかっとるわい!だが一品のみだからな」

─はいはい─と、しみったれた事をいう相方を適当な返事でいなしておいて、彼女は席を立った。

「ん?どこ行くんだ?」

これから注文しようと言うときに……疑問に思って横島は普通にたずねたのだが。

「……レディーにそゆこと聞かない!」

かるく一睨みされて、口をつぐんだ。

「私キツネうどんね~~」

軽く手を振って奥へ去っていくタマモ。それを横島は見送ったのであった。






さて、ここは男性諸君には神秘の空間「女性用トイレ」。
とりあえず何が神秘であるとかは置いておく。

その中の1つの個室。使用者は白面九尾の大妖怪様だった。

「ふぅ~」

なにやら終えたようで、タマモはペーパーで謎な部分を綺麗にすると、立ち上がった。
そして、用をたす為におろしていた下着を履こうと、パンツのゴム部に指をかけたその時であった。


──ブッチン──


なにモノかの断末魔が聞こえた。
それは、とても小さく、かぼそい悲鳴であったが、不思議とタマモにはこの世のどんな音よりも大きく響いた。

おそるおそる、自身の腿のあたりで抑えているソレを見る。


 それはパンツというには、あまりにも緩すぎた。
 緩く、頼りなく、脆く、そして伸びすぎていた
 それは正に布切れだった



タマモはパンツを上げた────パンツはずり落ちた
パンツを上げた────ずり落ちた
上げた────落ちた
上げ────落ち
…………
……



永遠に続くのではないかと思われた格闘であったが、ついに狐少女は手を止める。
認めたくない……現実。
彼女は、それを綺麗に畳むと、厳かにポケットにしまった。

個室から出るタマモ。秘密の部分にあたる空気の流れが、やけにはっきりと分かる。
ひどく頼りない。
失った後、初めて気づく大切なもの…………タマモはそんな言葉を噛み締める。

タマモは洗面台で手を洗うと、鏡に映る己に向かって気合を入れた。

「タマモ……いくわよ!」

もはや己を護ってくれる存在はない。
その姿は、負けることの出来ない戦いに赴く戦士のソレであった。






「おそかったな、大きいほうか?」

テーブルに戻ってくるタマモにデリカシー皆無の言葉がかけられた。
だが、声をかけられた方の少女は、そんなことなどまったく気にならない…というか気にしてられないといった様子で、しきりにミニスカートの端を気にしている。

そして

「横島……帰るわよ!」

──は?なに言ってるんだこの子は?

横島がそう思ったのも無理はない。以前からの約束を果たせとアパートまで押しかけてきた狐少女。横島の懐具合もうっちゃっておいて、強い要望によりここまで連れてきたのは誰だったか?

そんな風に来たというのに、目的の品すら見ずに帰る?

「へい!『キツネうどん』『かけうどん』お待ち!!」

そんな折、注文していた品がきた。
店員は慣れた手つきで2杯のうどんをテーブルに置くと「ごゆっくり」と定番の言葉を残して去っていく。

「あ~、よくわからんが、もったいないし食え」

横島は目の前に立っている少女をうながすと、自分の分に箸をつけはじめた。


タマモは葛藤していた。
全国、いや全世界でも指折りのお揚げマニアな彼女である。目の前におかれた品は、そんな彼女の目をもってしても、問答無用で美味しそうである。

──だがしかし!座ることなどできない!!むしろ一刻も早く撤退したい!!
──ミニスカートで座る、それは乙女の一大事につながるかもしれないから!!
──でもお揚げは美味しそうだ!

あらゆるものが煮えたぎったタマモは、箸を取る。
そして、丼を左手で持ち上げ……立ち食いをはじめた。

そんな彼女の立ち食い姿を見て、白亜庵の亭主『亭羅乃鎖宇琉須』氏(56歳)が
  『あのムスメ……ただものじゃねえ』
などと唸ったとか唸らなかったとか、本当にどうでもいいことなので放っておく。


熱い…だけど美味しい。もの凄い勢いでうどんを掻っ込むタマモ。
とにかく今は一刻も早く目の前のうどんを平らげることだ。
容赦なくおそってくる熱と戦いながら、タマモは涙さえ浮かべてうどんと格闘していた。
無論、ときどき侵略してくる空調の風の魔の手から自身の聖域をガードすることも忘れない。

──そして彼女は偉業をなしとけた……戦いに勝利したのだ──

うどんを露まで残さず食したタマモ。
もちろん聖域も無事だ。
後はこの場を立ち去り、速攻で帰宅して頼もしい守護者を己に付与するのみ。

少女は、何かをやりとげた者のみが纏うことの許されるオーラを背負って、右手を握り締めた。

そんな彼女の姿を見て、白亜庵の亭主『亭羅乃鎖宇琉須』氏(56歳)が
  『やったなお嬢ちゃん……』
などとニヤリと笑ったとか笑わなかったとか、本当にどうでもいいことなので放っておく。




唖然として眺めていた横島だったが、そんなところに携帯電話の着信音が鳴った。
ちなみにこの携帯電話、美神が横島にあずけたものだ。毎月の通話記録はきっちりと報告されるしくみにもなっている。

「──もしもし?……あ、美神さん?」

どうやら掛けて来たのは美神らしい。

「──え?今すぐっスか?──いやそうゆう訳じゃ……イエッ!直ぐに向かいますサー!!」

そして、電話を切る横島。目の前の立ち食い少女を見る。

「仕事だ!すぐ行くぞ!すぐだ!!NOW!!」

あわただしく支払いをする横島。なにやら切羽詰った事情があるらしい。
だが、そんな横島を見ながら、タマモはすっかり思考が飛んでいた。
急展開に背負っていたオーラも霧散してしまっている。


──仕事?この状態で?マジデスカ??──


「…ちょっと私、今は……」
「急ぐぞおぉ────っ!!」

支払を済ませると、有無を言わせずタマモの手をとって外にでる横島。

そんな彼女の姿を見て、白亜庵の亭主『亭羅乃鎖宇琉須』氏(56歳)が
  『また来なよソルジャー……』
などとサムズアップしたとか、しかったとか、本当にどうでもいいことなので放っておく。






「ひゃう!」

外に出ると、室内以上に空気の流れを秘密の部分に感じて、タマモはおもわず声をあげてしまった。
先ほどの空調の風などとは比べ物にならない強敵である。
タマモは一段と己の秘密地帯を護るためにスカートの端を強くおさえる。

だが、そんな彼女の必死の防戦を嘲笑うかのように……

「時間が惜しい!電車をつかうぞタマモ!!」
「…だ、だから────」

駆け出す二人。もっとも一人は手をとられているため、問答無用で走らされているのであったが。

捲れる──抑える
捲れる──抑える
捲れる──抑える

それは、涙なくしては見ることのできない必死の防衛戦であった。
ややもすれば破れそうになるスカート戦線を、タマモは空いている右手を逐次投入して突破を許さない。
まさに、歴史に残る大攻防戦である。

だが、ここで業を煮やした侵略軍は、ついに最終兵器とでもいうべき予備戦力を投入した。




道路の向こう側に駅が見えてきた。
横島は走りながら素早く左右を確認した。横断歩道、歩道橋といったものは随分と遠い、回り道をすれば結構な時間を取るだろう、そして道路に車はなかった。

瞬時に導かれる回答。

「突っ切るぞ!」

そして、横島とタマモは道路に突入する。




さて、この道路だが、駅前ということもあってか、きちんとした道路であった。
なんといってもガードレールまでついている。
そうガードレールまでついている。
もひとつ!ガードレールまでついている!




え?え?え?ウソ?ウソ?ウソぉ────っ!!




横島はガードレールを飛び越える。無論、手をつかまれたままのタマモも飛んだ。


──なぜかスローモーションのように世界が流れたと、通行人であったA氏は語る。


二人の体はジャンプ時の力のベクトルによる上昇を行い、上昇限界点を向かえ、重力に引かれて落下する。

そして落下の際、なにかが盛大に捲れ上がった。
大抵はそこに、白やピンクなどの輝きを放つ神秘の護り手が存在するはずなのだが、今の彼女にはそれがない。
健康的な肌と同じ色が、どこまでもどこまでも続いていた……


道路を渡る


もうひとつガードレールを飛び越える。
またしても盛大に捲れ上がる何か……そして暴かれる謎の部分。




「おし、丁度電車が来たじゃねえか!ついてる!」

前を走る横島は、そう言って満足そうに笑ったのであるが……後ろをいく少女は何も答えてくれなかった。
前髪に隠れて表情は見えないが、なんともおいたわしい雰囲気を醸し出している。

そして、あわただしく駅へと駆け込んでいく二人。
何かを目撃し、衝撃のあまり立ちすくむ通行人の人々を後に残して。

……………………
………………
…………
……





「──ひぐっ…えぐっ…………」
「──すまんかった……マジですまんかった」


その後、電車の中で何かを聞かされれ、延々と土下座する男の姿も目撃されたという。








おしまい








後書きのようなもの

え~と、キツネそばです。
微エロ分に挑戦です。
え?まったくエロくない?…………m(_ _;)m
そろそろシリアス書きたいな~と思いつつ、こんな話が出来てしまう;
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